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社内データを活用する生成AI――RAGとは何か

公開日: 2026/8/1

一般的な生成AIは、公開情報をもとに幅広い質問へ回答できます。しかし、「自社の経費精算ルールはどうなっているか」「この製品の保守手順を教えてほしい」といった社内固有の質問には、そのままでは正確に答えられません。

社内文書を検索し、見つかった情報をもとに生成AIへ回答させる仕組みが**RAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)**です。RAGを使うと、社内規程、業務マニュアル、FAQ、製品資料などを参照した回答を作りやすくなります。

RAGの基本的な仕組み

RAGは、大きく「検索」と「回答生成」の2段階で動きます。

  1. 利用者が質問を入力する
  2. 質問に関連する箇所を社内文書から検索する
  3. 検索結果と質問を生成AIへ渡す
  4. 生成AIが検索結果を根拠として回答を作る
  5. 回答とともに参照元を表示する

生成AIに社内文書をすべて記憶させるのではなく、質問のたびに必要な箇所を探して渡す点が特徴です。文書を更新して検索対象へ反映すれば、モデル自体を学習し直さずに、新しい情報を回答へ利用できます。

RAGが向いている業務

RAGは、正解の根拠となる文書があり、同じ種類の質問が繰り返される業務に向いています。

  • 就業規則や各種申請に関する社内問い合わせ
  • 製品仕様や操作方法に関する問い合わせ対応
  • 保守・障害対応マニュアルの検索
  • 営業担当者による提案資料や事例の検索
  • プロジェクト文書からの過去経緯の確認

従来のキーワード検索では、利用者が文書内の表現を知らなければ情報を見つけられないことがあります。RAGでは自然な文章で質問し、複数の文書をまたいだ回答を得られるため、情報を探す時間の短縮が期待できます。

RAGでも誤りはなくならない

RAGを導入すれば、生成AIの誤回答が完全になくなるわけではありません。検索結果に必要な情報が含まれていない場合や、古い文書と新しい文書が混在している場合、もっともらしい誤った回答を作る可能性があります。

回答画面には、参照した文書名と該当箇所へのリンクを表示し、利用者が原文を確認できるようにします。また、十分な根拠が見つからなかった場合には、無理に回答せず「情報が見つからない」と返す設計が必要です。

導入前に整理すべき3つのこと

1. 文書の内容と鮮度

AIが参照する文書に誤りがあれば、回答も誤ります。重複したマニュアル、廃止済みの規程、作成者しか意味を理解できない資料を整理し、正式版がどれか分かる状態にします。

文書の責任者と更新日を記録し、定期的に見直す運用も必要です。RAG導入は、社内文書を整備する機会でもあります。

2. アクセス権限

検索できるからといって、すべての文書を全社員へ見せてよいわけではありません。人事情報、顧客情報、契約情報などは、元の文書と同じアクセス権限を回答にも適用する必要があります。

利用者ごとに検索範囲を制御し、権限のない文書の内容が回答へ混入しないことを確認します。入力内容や検索履歴をどこまで保存するかも、導入前に決めてください。

3. 正解を評価する質問

「便利そう」という感覚だけでは品質を判断できません。実際に現場で寄せられた質問から、期待する回答と参照文書をセットにした評価用データを作ります。

導入前後で、正しい文書を検索できた割合、回答の正確さ、回答不能と判断できた割合、担当者による修正量などを比較します。文書や検索方法を変更したときにも、同じ質問で再評価できます。

小さな範囲から始める

最初から社内の全データを対象にすると、権限管理や品質確認が複雑になります。まずは、管理者と利用者が明確な一つの部門、一種類の文書、一つの問い合わせ窓口に範囲を絞ります。

RAGの成否は、生成AIモデルの性能だけでは決まりません。信頼できる文書、適切な検索、アクセス制御、継続的な評価がそろって初めて、業務で使える仕組みになります。AI導入の前に、誰がどの情報を管理し、誰が利用できるのかを整理することから始めましょう。